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 漫画の100冊「すごい」の1 

裸のお百
(一ノ関圭)

 一ノ関圭のデビューは鮮烈。とにかく上手かった。しかし寡作で(構成の完璧さを考えると当然だが)なかなかお目にはかかれない。
 明治の洋画黎明期にあって、罵倒にさえ惑わされず鬼気迫る創作活動を続ける主人公らくだの生きざまを描くこの作品は、映画で言えば黒沢明ばりのリアリティをもって読むものに迫ってくる。もうひとりの主人公、生きるためならどんな汚いことでもやってのける裸体モデルお百の存在感にも圧倒される。明治の息吹が2人の迫力とクロスして、まさにドラマだ。
 単行本は他に、同じく短編集の「ランプの下」「茶箱広重」の2冊が出てるだけ(だと思う)。作品全てが傑作というこんな作家、放っておく手はないね。
ワダチ
(松本零士)

 最後にすがりついたワダチの身体をすりぬけて崩れ落ちるヒミコ。転がり落ちた心臓部だけが「ワダチさん、ワダチさん…」と繰り返しつつ震えている。ヒミコはスパイとして送り込まれたアンドロイドだったのだ。せつなさが込み上げる見事なエンディング。
「宇宙船艦ヤマト」で一世を風靡した松本氏の、四畳半ものの集大成がこれ。日常的下宿生活からダイナミックな宇宙生活への飛躍もスムーズだし、スピーディーな展開が最高。そして何より、ワダチを取り巻く美女たちが魅力的だ。
 ペーソス漫画という唯一無二の存在を誇る「男おいどん」と情趣溢れるエロ漫画「大四畳半大物語」と併せて一読をオススメする。人生が分かるかもよ。
坂道のぼれ!
(高橋亮子)

 亮子さんの漫画の主人公はいつもまっすぐだ。すぐレッテルを貼りたがる大人たちの前で、率直に、不器用に生きている。主人公亞砂子も、いかにもまっすぐ。無邪気な同級生の中で、一人違う自分を発見し、屈折した少年新田の中に自分と同じ本質を見い出す。誤解だらけの中で、亞砂子と新田はごく自然に引かれあっていくが…。
 亮子さんの漫画を紹介するのは骨がおれる。ストーリー展開やキャラ云々よりも、作者の作品に向き合う真摯な姿勢がたまらないのだ。そんなもの読んでもらうより他に伝わるわけがない。「つらいぜ!ボクちゃん」「しっかり!長男」…、どれを取っても傑作だ。1人でもファンが増えるとこのコラムも成功なのだけど…。
リュウの道
(石ノ森章太郎)

 石ノ森氏の傑作、リュウ3部作の筆頭が「リュウの道」だ。宇宙から1人地球に生還した少年リュウ。しかし、たどり着いた地球は未開の密林に覆われている。地球は、人類はどうなってしまったのか。リュウの生存を賭けた戦いの日々が始まった。…冒険ものとしては最上のデキ。核戦争後のシミュレーションもよくできている。
 逆に原始時代を舞台に、原始人の中でミュータントとして育つ少年の苦悩と、生存の戦いを描くのが「原始少年リュウ」。もうひとつの地球に迷いこんだリュウの異世界人との戦いを描く「番長惑星」。3作とも、地球にとって本当に人間が必要なのか?という問いかけを突き詰めたもの。深読みできるところがなかなか。
火の鳥・鳳凰編
(手塚治虫)

 昭和50年頃には既に伝説の作品で、当時の漫画少年たちは例外なくはまっていた。特に「鳳凰編」は、しびれるほどの秀作だ。我王という人物の生きざま。極悪人だった彼が、狂気と苦しみの末に辿りついた静かなる無我の世界。逆に気高き存在だった茜丸が、ついには哀れな悪人になってしまうという見事なコントラスト。
 その生き血を口にすれば永遠の命を得られるという火の鳥の存在は狂言回しでしかない。永遠の命を自ら否定して溶鉱炉に飛び込むロビタの姿に(復活編)、生き埋めにされても歌いながら生き続けていく生け贄の姿に(大和編)、手塚さんの言いたかったはずのことが、心の奥に突き刺さってくる。忘れてはならない作品だ。



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